その子を見つけたのはただの偶然。
ニ ヒ リ ズ ム の 願 望
A d e s i r e of t h e n i h i l i s m .
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北の海(ノース・ブルー)はベポたちハートの海賊団にとって所謂(いわゆる)生まれ故郷というものだ。その名のとおり、世界を4つに分けたときに北に位置する海。その海の特徴といったら、他の3つの海に比べると、「雪国」が多いというのが一番に出てくるだろう。 たった今降り立ったばかりのこの島は、そんな世界を4つにわけるために縦に流れる海―――グランド・ラインの中に位置する島のひとつで、北の海の島のような冬島で、目の前では雪が吹き荒れ、数メートル先さえはっきりと見ることが困難な状況になっていた。 北の海でもそうないほどの酷い状況だ。いくら北の海でも、真昼間から吹雪くことは滅多にないのだ。しかし、ここは北の海ではなくグランドライン。巷では『何が起こってもおかしくない海』だと言われている。だとしたら、この吹雪も頷ける。 どんよりとした灰色の空は、一気にトラファルガー・ロー率いるハートの海賊団のクルーたちの気分を急降下させていった。もちろん船長であるローの気分も、さすがにこの吹雪ではあがることはなかった。もはや、この吹雪は運が悪かったとしか言えない。 「なんか……俺たち、上陸する前から歓迎されてないッスよね、この状況」 誰かが呟いた一言にみな一斉に頷く。もとより、海賊なんてのはどこに行こうと歓迎などされない。今まで上陸した島もそうだし、極力海賊である、ということがバレないようにはしてきていた。 しかし、そんな中で一人だけ違う反応を見せるやつがいた。ハートの海賊団だ、っという証明にもなるその分厚いツナギの下に人間らしからぬ風貌をした―――その姿はただの熊にしか見えないのだが―――人間のように喋ることが出来る白熊のベポは、みんなが溜息をつくなか、一人だけ目を輝かせていた。 「………………ベポ、なんでそんなに嬉しそうなんだ、お前」 ツナギの上から、震える体を抱きしめてキャスケットは隣にいるベポを凝視する。 「だってキャス!僕の故郷にそっくりなんだもん!」 「……あぁ、そーいやいつも雪が降ってたよな、あの島」 クルーの一人がベポの言葉を聞くと、ベポを乗せた島のことを思い出しながら呟いた。 寒すぎて死ぬかと思ったぜ、とこれまたクルーの誰かが笑いながら呟いた。しかし、そう言った声も寒さに震えていて「今も死にそーじゃねーかよ、てめぇは!」と誰かが笑い飛ばした。 そんな、自分の故郷のことでクルーが盛り上がっている中、ベポは船端を握りしめながらプルプルと身体を震わしていた。吹き荒れる雪。微かに見える高い山。人気の無い静けさ。澄んだ空気。――――気持ちを高ぶらせるものがこれでもかと揃っている。 「――――もう我慢出来ないッ!!!」 「あッ!?―――お、おい、ベポ!!?」 慌てて手を伸ばしてももう遅い。何を血迷ったか、ベポは甲板から陸に飛び降りて一寸先すら見えない吹雪の中に飛び込んで行ってしまったのだ。ベポのすぐ横にいたキャスケットは顔を青くしてベポの消えていった方を見つめ、ふと我に帰ると後方を勢いよく振り返った。 「!!!」 「…………なんだよ…」 「ッ…なんだよじゃなくて!!どーすんスかぁ!?ベポの奴!!!」 そうキャスケットが見る視線の先には、このハートの海賊団の船長であるトラファルガー・ローの姿があった。キャスケットだけじゃなく、ベポが吹雪きの中に消えていったのを見ていたクルーたちは皆ローへ視線を向けた。 「………ほっとけ。じきに帰ってくんだろ」 * 声が、聞こえた気がした。 酷く甘い声だ。大丈夫だ、と言っている。それと同時に、ぬくもりを感じた。 私は、まだ生きているんだと感じれた。 「 … … お か あ さ ん 」 「 」 何かを言った気がしたが、それはハッキリと聞えなくて、でもさっきと同じようにやっぱり優しいぬくもりが私を包んだ。 なぜだかそのぬくもりに涙が込み上げてきた。しかし、頬が濡れる感じも涙の冷たさも感じることはなくて、もしかしたらこれは夢なんじゃないかと思った。もしこれが夢だったら、目を覚ましたらそこは自分の部屋だったりするんだろう。朝よ!起きなさい!って、お母さんがいつものように起してくれるに違いない。 しかし、目が覚めると、私の部屋もお母さんの声も無く、見覚えの無い天井だけがただただ呆然とする私を迎えたのだった。 title by [ Rachael(レイチェル) ] 2010.04.30 |